海の上では、一歩間違えれば事故に結びつくリスクを忘れないようにしましょう。ただし、リスクを恐れ、リスクを学ぼうとしないことも危険といえます。人間の営みに欠かせない自然の恵みを受け入れましょう。人間が立ち向かうことの出来ない自然の猛威からは、引き下がりましょう。
危険を危険と認識できないこと、それはもっとも危険です。何が危険であるのかを学びましょう。
万一の事態に備えて、応急処理などの訓練を心掛けるとともに、必要なファーストエイド・キット(救急箱)や救命器具などを携行してください。全国の赤十字社や地域の消防署にて救急法のセミナーが開催されていますので、是非受けておいてください。
アウトリガーカヌーは濡れるスポーツであり、運動量も多いのがポイント。動き易さ、快適さ、そして濡れたときにも身体を冷やさず、泳ぐことを妨げないウエアを必ず着用してください。濡れると水を吸い、乾きの遅い、綿シャツやジーパン等は厳禁です。通気性のある化繊素材(ナイロン、ポリエステル等)を選ぶようにしましょう。
海上では風が体温を低下させます。一番上に着るウエアとして、防風、防水性の高い、ウィンドブレーカーが有効です。また、夏の晴天時などは熱中症や日焼けを避けるため、帽子やサングラスを着用し、サンスクリーンなどを利用しましょう。
水中に放り出されても、確実な浮力を与え、溺死から救ってくれるライフジャケットも、水の上で遊ぶアウトリガーカヌーでは、必ず着用してください。身体の動きを妨げず、十分な浮力が設定されているカヌー専用のライフジャケットをお勧めします。
自動車に運転前点検が必要なように、カヌーも使用前のチェックを心掛けましょう。海上で不具合が生じては、安全で快適なパドリングは望めません。カヌー本体のクラックや前後のバルクヘッド(浮力維持のための船室)の気密性は確実に確認してください。さらに、ライフジャケットなどの器具も破損や故障などがないか、使用前にしっかり点検しましょう。
また、アウトリガーカヌーの場合はベイラー(水出し用のアカ汲み)、レスキューロープ、ホイッスル、緊急連絡用の携帯電話などもしっかり確認しましょう。
海へ出る前に、仲間や家族にパドリングの予定(エリア、帰着時刻)を伝えておきましょう。専用の出艇レポート用紙を作って、同行者名、予定ルート、連絡先(携帯電話)、予定帰着時刻などを記録し、艇庫などに残しておくことをお勧めします。
万一、パドラーの傷病、カヌーの破損などにより航行が不可能となった場合、無理せず救助を要請しましょう。特に海上でのトラブル時はカヌーが浮かんでいる限り、カヌーから離れないように。トラブルの対応は予想以上の体力や精神力、そして普段からの訓練が必要です。
救助やサポートが必要な場合、片手を頭上に揚げて左右に振ります。これは国際的なサインですので覚えておきましょう。また、ホイッスルを2秒以上続けて、何回か吹くことも救助要請のサインとなります。
地域のマリンスポーツ業者などがレスキューサービスを行っている場合は、普段から利用方法などを確認しておくことが大切です。また、より緊急を要する場合は消防(TEL:119)や海上保安庁(TEL:118)へ連絡をとりましょう。
HULI(フリ)とはアウトリガーカヌーが転覆することです。抜群の安定性が特徴のアウトリガーカヌーですが、波や風を受けたり、不用意にアマと逆サイド(右側)へ体重をかけると転覆してしまうことがあります。乗り降りの際も油断せず、必ずアマ側から乗り降りしましょう。海の上では絶対にHULIすることがない様、最大限の注意を払わなくてはならないのです。そして、HULIを避けるためには幾つかのポイントがあります。
乗り手やコンディションに合せた正しいセッティングをしましょう。少しでもバランスに不安があれば、面倒でも一旦ビーチへ戻ってシート順を交換したり、ラッシングをやり直したりして、安全第一を心がけましょう。
波や風をアマ側(左側)から受けるとHULIするリスクが高まります。往復コースなどの場合は、後半の疲れた頃にアマが風下となるようなルートを選ぶのが賢明です。
海上でカヌーのバランスが悪いと感じたら、「Watch アマ(ウォッチ・アマ)」の号令をステアがかけます。この場合、アマ側(左側)を漕ぐパドラーは出来るだけ上体を左外へ乗り出し、アマに重心を掛けて安定性を保つようにしましょう。状況によっては全員でアマ側を漕ぐ場合もあります。
万一、HULIしてしまった場合は、最初に全員が無事であることを確認します。